蝉の渓谷は、きわめて興味のある形成過程をたどっています。岩壁を作る岩石は、秩父層群のチャートであり、硬質の珪酸分に富んだ堆積岩です。チャートは石英に似た硬さをもっている反面、衝撃に弱く砕けやすいという性質を持っています。そのため、洪水時に河床を転がってきた大きな石が川底のチャートを砕きとり、河床面を下げていったと考えられています。
この渓谷の景観は、県内に存在する多くの峡谷同様大変美しく、南牧川の急流が岩肌を浸食して、素晴らしい渓谷美を作り上げています。
この渓谷に望んで、俳諧芭蕉の「奥の細道」立石寺(山形)の一句が残っていることから、この地が群馬県を代表する優れた風致景観であることがわかります。
(「閑さや岩にしみ入る蝉の声」安永2年、闌更刻)
なお、この地の名称「蝉」は、「狭水」の転訛といわれています。
(参照:現地観光情報等)